日本政策金融公庫の『創業計画書』マニュアル~8.事業の見通し~
「8.事業の見通し」は創業計画書の中でも最重要項目の一つです。
ここで算出された利益で借入金を返済できるかどうかがポイントになります。
審査の中でも最重要項目となりますので、精度の高い計画書を作成する必要があります。
「事業の見通し」は借りたお金を返せるかどうかの判断材料
日本政策金融公庫の担当者が「8.事業の見通し」を審査上重視する理由は、
「貸したお金を返してもらえる見込みがあるかどうか」
をここで判断するからです。
では、具体的に何を書いていったらいいのかです。
創業計画書に記載するのは次の項目です。
- 売上高
- 売上原価
(仕入高) - 人件費
- 家賃
- 支払利息
- その他経費
- 利益
売上から仕入れや経費を引いた残りである利益で、毎月の借入金を返済できるかどうかを判断します。
この収支計画がプラスにならなかったり、あまりにもギリギリになるようなら、そのビジネスは考え直した方がいいでしょう。
根拠のある数字でないと審査通過は厳しい
「これだけ儲かったらいいな」
起業家サヤカ
というような根拠ない数字を記入しても融資審査は通過しません。
融資審査で数字を書く場合は、その数字に根拠があるかどうか必ずチェックされます。
「8.事業の見通し」欄でも、売上・売上原価(仕入高)・経費を算出した根拠を求められます。
日本政策金融公庫所定の創業計画書の記入欄は、スペースが狭い書式になっています。
融資審査でもキモとなる箇所ですので、根拠説明は別紙で補足説明資料を作成することをオススメします。
売上高の算出方法
売上構造の基本は次の公式になります。
業種にもよりますが、基本はこの式にご自身の業種に応じて調整してみてください。
例えば、美容室なら、
これに1カ月の営業日数をかければ、月商を算出することができます。
客単価は男性、女性、子供、など細分化することができるかもしれません。
ターゲットを絞れば、より明確な予想客単価は出せます。
座席数は4つあったとしても、実際に全部稼働していることは少ないと思いますので、稼働平均を当てはめます。
また、平日・休日で客数に違いが出てくる場合は、必要に応じて分けて売上予想を算出しましょう。
売上原価(仕入高)の算出方法
売上原価は、商品・製品・原材料などの仕入れ費用になります。
仕入業者が決まっていて、見積書や契約書があればその資料を根拠に売上原価を算出します。
決まっていない場合は、業界平均の売上原価率をベースに売上原価を計算します。
売上原価の業界の平均は、小企業の経営指標で調べることができます
そば・うどん店を例に原価率の平均を見てみます。
「小企業の経営指標 →飲食店・宿泊業→業種別(PDF)→そば・うどん店」で開くと、
2016年10月現在の、そば・うどん店の売上高総利益率は67.3%となっています。
原価率は(1-売上高総利益率)で算出できるので、そば・うどん店の原価率の平均は32.7%となります。
あくまで平均ですので、立地や提供する商品・サービスによって原価率は変わってきます。
業界平均よりも高かったり、低い原価率となるなら、その根拠を説明できるようにしてきましょう。
経費の算出方法
ご覧のとおり、経費の記入欄は、人件費・家賃・支払利息・その他、とかなりザックリとしています。
公庫所定の創業計画書にはザックリ記載でも構いませんが、審査通過確率を高めるなら、より細かい経費項目と根拠説明を別紙で作成することをオススメします。
経費項目のポイントはズバリ、漏れのないように記載することです。そりゃ当たり前だろう、と思う方もいるでしょうが、実際には漏れる場合が多いのです。
経費の主な項目をあげていくと、
- 人件費
(家族、社員、パート・アルバイト) - 法定福利費
(社会保険料など) - 地代・家賃
(駐車場・テナント) - 支払利息
- 公共料金
(電気・電話・ガス・水道) - リース料
- 広告費
- 旅費交通費
(出張費・ガソリン代) - 車両維持費
(車検代・整備費用) - 接待交際費
- 新聞図書費
- 専門家報酬
- (税理士・社労士など)
- 減価償却費
- 備品・事務用品費
など、オーソドックスな経費だけでもこれだけあります。
他にも、開業予定の業種で発生する経費がないか確認しておきましょう。
計画上、利益から返済ができればOKではない!
創業計画書の「8.事業の見通し」欄を記入すると、
が計算されます。
この利益から毎月の借入返済ができればOK!では終わりません。
何かを忘れてはいないでしょうか?
そうです。
あなたの生活費です。
税理士わくい
利益が出て、何とか借入返済ができる収支計画となったとします。
問題は、「残りのお金で生活できますか?」という話です。
もっといえば、利益が出る計画なら、所得税や事業税が発生する可能性があります。
ビジネスをやる以上は不測の事態に備えるための貯蓄をしていく必要があるでしょう。
公庫の面談では、毎月の生活費がどれくらいかかっているのか、についても聞かれます。
根拠のない収支計画で利益が出すぎるのも問題ですが、根拠がシッカリしているからといって、ギリギリすぎる収支計画でも審査通過は厳しくなります。
収支計画は一度作って終わりではありません。
何度何度も計画を練り直して、実現性が高く収益が出るビジネスモデルを考えましょう。
まとめ
「事業の見通し」は、根拠があり、漏れのない精度まで何度も練り直す必要があります。
事業計画は、審査上において最重要項目といっても過言ではありません。
- 売上高
- 売上原価(仕入高)
- 経費
これらについて何度も「漏れはないか、根拠はあるか」を自分に問いながら計画書をブラッシュアップしていきます。
また念入りに考えた根拠説明は、創業計画書のスペースには書ききれないので、別紙で補足説明資料を作成することをオススメします。
どんなに夢や熱意があったとしても、精度の高い事業計画書を作成しなければ、融資審査通過の確率は下がってしまいます。
- 自分で融資申請するのには不安がある
- 事業計画はあるけど審査が通るレベルか心配だ
という方は、ご自身で融資申請される前に、一度税理士などの専門家に相談することをオススメします。
どんなに夢や熱意があったとしても、精度の高い事業計画書を作成しなければ、融資審査通過の確率は下がってしまいます。
- 自分で融資申請するのには不安がある
- 事業計画はあるけど審査が通るレベルか心配だ
という方は、ご自身で融資申請される前に、一度税理士などの専門家に相談することをオススメします。
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